1) 移動するときに足が交差したり,足幅が大き過ぎたり,また足が畳から離れ 過ぎたりすると,不安定な姿勢になるので,攻防の基本姿勢である自然体の大 切さと「すり足」の大切さを理解できるようにする。
2) かかとを畳に着けないよう注意するが,かかとが畳から離れ過ぎると膝が伸 びきった状態となり,自然で自由な進退動作ができなくなるので,かかとの一 部分が畳に軽く触れて移動することを理解できるようにする。
3) 組んで移動すると前かがみの姿勢になりやすいので,目は相手の胸元を見る ようにして移動できるようにする。
4) 相手の動きに即応して進退動作ができることが,安定な姿勢を保つことにな ることを理解できるようにする。
(ウ) 練習方法の例例 1) 単独動作で,「歩み足」,「継ぎ足」による前後左右,斜めの前後左右方向 への進退動作を「すり足」で行う。
例 2) 「取 (とり) 【注4】」と「受 (うけ)【注5】」を決め,「取」の動きに応じて「受」が対応して 移動するなどの約束練習を行う。
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【注1】 「継ぎ足」 一方の足が他の足を越して歩くのではなく,足を継いで歩く。
【注2】 「歩み足」 主に前後への歩き方,普通の歩き方に似た歩き方。
【注3】 「すり足」 足の裏で畳を擦るようにして移動する方法。
【注4】 「 取 (とり) 」 技をかけたり,投げたりする者をいう。
【注5】 「 受 (うけ) 」 技を受けたり,投げられたりする者をいう。
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相手を投げようとすれば,まず相手の 体勢を不安定にすることが必要である。 この不安定な体勢にすることを「崩す」 という。相手を崩す場合には,相手の力 や動作を利用したり,自分の力を用いた りして身体全体で押したり,引いたりし て相手の安定を失わせる。
(ア) 方法
相手を押したり,引いたりして崩したり,相手が押してくるのを利用して引いて 崩したり,相手が引くのを利用して押して崩したり,体さばきを利用して崩したり する。基本的な崩しには八方向の崩しがある。
八方向の崩し (図参照)
(イ) 学習指導の留意点
1) 手だけで引いたり押したりして崩そうとすると,自分の体勢も崩れてうまく 崩すことができないので,前後左右の進退動作や体さばきを利用するなど,自 分の体勢を保ちつつ,身体全体の動きで崩すように心掛けてできるようにする。
このとき,相手との間合いの大切さについて理解できるようにする。
2) 相手が完全にバランスを崩すまで崩そうとするのではなく,わずかに足裏の 一部に重心が乗るようにするだけでよいことを理解できるようにする。
3) 初心者は,相手が静止している姿勢で崩しの感じをつかむことができるよう にし,技能が進むにしたがって移動しながら崩すことができるようにする。
相手を不安定な姿勢にするため,自分の身体を前後左右に移動したり,方向を変 えて相手を崩し,同時に,相手を投げるのに都合のよい体勢になることを「体さば き」 という。基本的な体さばきには,「前さばき」,「後ろさばき」,「前回りさばき」, 「後ろ回りさばき」などがある。
(ア) 方法
1) 右(左)足前さばき
自然本体から右(左)足を自分の位置していた右(左)足の前方に左(右)向 きになるように畳に着き,左(右)足はもとの右(左)足の位置に着き,直角に 左(右)向きになるように方向を変えて体をさばく。
右足前さばき(図参照)
2) 左(右)足後ろさばき
自然本体から左(右)足を右(左)足の後方に引きながら,直角に左(右)向 きになるように方向を変えて体をさばく。
左足後ろさばき (図参照)
3) 右(左)足前回りさばき
自然本体から右(左)足を左(右)足の前方に出し,180°回り込みながら体 をさばき,自然本体の姿勢になるように方向を変える。