第4章 技能指導の要点


① 互いに自然本体で右(左)組みとなる。
② 「取」は右(左)足を「受」の左(右)足の前に親指が内側に向くように して踏み込む。
③ 次いで,左(右)足を90°回して自然本体となり,「受」を真前に崩 す。

2) 後ろさばきによる練習

図参照

./img/Fig_004_UshiroSabaki_Mae_Kuzushi.png

① 互いに自然本体で右(左)組みとなる。
② 「取」は右(左)足を軸にして左(右)足を90°回して左(右)を向いて 自然本体となり,「受」を真前に崩す。


(4) 受け身

 柔道は投げることが主となるため,投げられた場合に身体への衝撃を少なくし,安 全に身をこなす受け身が重要である。投げられた場合,後方へ倒れたり,側方へ倒れ たり,前方へ回転して倒れたり,また,前方に倒れたりするので,後ろ受け身横受 け身前回り受け身前受け身が必要になる。

 学習指導にあたっては,安全に留意してできるようにすることが必要である。

 そのためには,低→高,弱→強,遅→速,単独→相対,その場→移動してなど,段 階を追って学習ができるようにすることが大切である。その際,次のことに留意して 学習できるようにする。

○後ろ受け身では,後頭部を畳に打たないようにする。
○横受け身や前回り受け身では,かかとを打たないようにする。また,両脚が交差し ないように注意する。
○前回り受け身では,手の着き方,回転時に身体が畳に触れる部位と順序,回転後の 両足の着き方を特に注意する。
○左,右両側の受け身を均等に練習して左,右両側の受け身ができるようにする。
○単独の受け身だけでなく,互いに組んで投げられるときの受け身も十分練習し,安 全にできるようにする。
○各種の受け身に習熟することが,投げ技の習得と安全確保につながることを理解で きるようにする。

ア 後ろ受け身

(ア) 方法

1) 仰臥(あおむけ)姿勢から

 あおむけの姿勢から,あごを引き頭をあげ,両腕を胸の前にあげて交差し,次 いで手のひらを下向きにして両方の腕全体で同時に畳をたたく。

・あおむけで腕全体で畳をたたく。 (図参照

./img/Fig_004_Ushiro_Ukemi_Point_01.png

・両腕は体側から30~40°に開く。 (図参照
ただし,「大外刈り」など背中の上部である首の後ろ辺りから落ちるような場合は,両腕の開く角度を大きくする。
./img/Fig_004_Ushiro_Ukemi_Point_02.png

・後頭部を畳に着けない
・腕全体で畳をたたく
・瞬間的に腕をはずませる
図参照

./img/Fig_004_Ushiro_Ukemi_Point_03.png

○腕全体で畳をたたく。腕を畳に押しつけてしまうと衝撃が強く残るので 瞬間的にはずませるようにする。

2) 長座(ちょうざ)の姿勢 【注】から

 両脚をそろえて前方に伸ばし,臀部を畳に着け,前方に両腕をあげて交差した 姿勢から,背中を丸くして上体を後方に倒し,両脚を伸ばしてあげながら輪が転 がるように倒れ,後ろ帯が畳に着く瞬間に両腕で畳を強くたたく。

・「後ろ受身」の危険な例(図参照

× 肘を曲げての受け身は効果がなく危険。

 また,「肘内障(ちゅうないしょう、英: nursemaid's elbow, pulled elbow)」などで 急に肘の伸びが悪くなって,受身がとれないことがある。 そのため,競技者および指導者や審判は,練習や試合などでよく留意する。

× 後頭部を打つと危険。

 頭部を打った場合は,意識障害がなくても練習を休ませる。

 頭部打撲等により脳震盪が疑われる場合は,以下の点が自覚される、または認められる場合はすぐに病院にいきましょう。
平成22年6月 (財)日本ラグビーフットボール協会 安全対策推進委員会
http://www.rugby-japan.jp/news/2010/id8349.html
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  1.頭痛がひどくなる(つよくなる)。
  2.強い眠気に襲われるか、または寝覚めが急に悪くなる。
  3.チームメイトの名前を言えない、または自分が今いる場所を正確に把握できない。
  4.記憶の消失(一時的)。
  5.一時的な失神、意識喪失。
  6.3回以上の嘔吐。
  7.行動が普段と異なる(混乱・錯乱している様子)。
  8.いらいらする(怒りっぽくなる)。
  9.上肢(腕)・下肢(脚)が痙攣する発作がおきる。
 10.上肢(腕)・下肢(脚)のちからが弱くなりしっかり立っていられない(ふらふらする)。
 11.発している言葉が不明瞭になる。
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./img/Fig_004_Ushiro_Ukemi_Kiken_Rei.png

【注】 「長座の姿勢」: 臀部を畳みに着け,背すじと両脚を伸ばして腰を下ろした姿勢 (図参照

./img/Fig_004_ChyouzaNoShisei.png

○後頭部を打たないようにするためには,あごを引き,帯の結び目を最後 まで見るようにする。
○あげた両脚と上体の角度が鋭角になると勢いがつき後頭部を打ちやすい ので留意する。

ア) 単独での練習方法 (長座の姿勢から)

・後頭部を畳に着けない (図参照

./img/Fig_004_Ushiro_Ukemi_Chyouza_1ri.png


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Author : 文部科学省 (MEXT http://www.mext.go.jp/).
Editor : 佐藤 智彦 (Sato tomohiko).

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